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WALLFLOWER CATALOGUE FILE.033 : つぐ minä perhonen
WALLFLOWER CATALOGUE

WALLFLOWER CATALOGUE FILE.033 : つぐ minä perhonen

いつか、私の蝶々を

先日、松本市美術館で開催されている『つぐ minä perhonen』展に行ってきました。
ミナ ペルホネンは今年30周年を迎えた、ファッションやデザインに興味のある人なら知らない人はいないブランド。
幼い頃に大切にしていたものをそっと掬いあげるような配色やモチーフ、細やかな刺繍をふんだんにあしらったものや、豊かな質感をともなったテキスタイル。それらを用いてファンタジックな世界観を表現した洋服や小物は、当初から感度の高い人たちを魅了してきました。2000年頃には、女の子たちはこぞってminäのミニバッグや、アイコニックな卵型のバッグを持っていたのを思い出します。
可愛いものがあまり似合わない上、私がまとうには贅沢品だったミナ ペルホネン。素敵だなぁと憧れながらも、そのフィロソフィーをなんとなくしか知らないままで過ごしてきました。でも、ミナ ペルホネンの物作りを通して「創造すること」の根幹を伝えてくれるこの展覧会は、ブランドの長年のファンだけでなく、物作りや表現に少しでも関わることのある人間にとって想像以上に素晴らしく、心に残るものでした。「デザインする、何かを作るって、本来こうだったよね…」と自分を省みては感嘆と反省の溜息を何度漏らしたことでしょう。
そんな展覧会の公式図録は、まるでデザインの教科書のようにも思える読み応えのある一冊。
それぞれのテキスタイルに込めた想いや詳細が、展覧会場を巡るように振り返ることができるうえ、会場でも興味深かったさまざまなジャンルの方への「つぐ」ことへのインタビュー動画の文字起こしも含まれています(図録限定で大竹伸朗さんのインタビューも収録)。
表紙は、会場限定のカバーを含めると全8種類。
私にとってはこの "surplus" という柄が、ブランドにとっても展覧会の流れの中でもとてもエポックなものに思われたので、手に取るならば通常版!それ以外考えられませんでした。
だって、この柄の生まれた背景をパッと想像することができるでしょうか?
抽象画のような自由で可愛い柄は当時から印象に残っていましたが、生みだされた経緯を知ると目から鱗というか、ちょっとした衝撃でした。
別な柄を切り絵で制作しているときに切り落とされた、捨てるはずの紙片が新しい柄に生まれ変わる。思いつくことはあったとしても、それを仕事の中で実際に行うこと、素敵な形で実現されたことに感銘を受けます。
図録でも垣間見ることはできますし、各テキスタイルの解説はミナの公式サイトでも読むことはできるのですが、原画に関しては展覧会に足を運んで、ぜひ目と心で受けとめてほしいと思うものでした。
この10年ほどは特に、便利なツールの普及によって誰もが手軽にデザインをできるようになりました。AIがそれらしい画像を生成するようになり、デザイン料の価格破壊も起きています。「表面を真似てそれっぽいものを作ること」が容易になった今、デザインという言葉がどんどん薄っぺらいものに変化するのも感じています。
でも、ミナ ペルホネンはそういった世情や物事とは逆行するような、唯一無二のクリエイションによって支持されつづけています。
デザイナー個人の感受性や気づきを大切に、手を動かしてアイディアを生みだし、手間をかけることを惜しまず、細部まで妥協しない。そして、それに関わる周辺の技術や人をつないでゆくことや社会の在り方も考えている。それがブランドの価値にもなっているのですから、表面的に真似できるものではありません。
その姿勢はなんだかパンクでもあります。ミナの本質はまったく変わらず、ごく普通に、丁寧に物事に向き合うことや、手にした人が幸せになることを願って仕事をしていたら、いつの間にか世の中がそうではなくなっていた、反転していただけだとは思うのですが。
会場にも展示してあった報道写真家・マルク・リブーが撮った『花を持った女』(銃口を向ける兵に女性が花を向ける写真)からの着想で生まれた "sleeping flower"、人里におりてきた熊と環境問題への問いから生まれた "alive" というテキスタイルは、そんなパンクの不服従・環境保全主義の精神性を特に感じさせるものでした。
独特のユニークな存在感や、手にして嬉しい可愛さ、クオリティの高さがありながらも、穏やかに、正しく不服従。
会社勤めなどをしていると特に妥協を強いられることの多い社会で、想いを貫く物作りをつづける強さを目にすると、気持ちも引き締まります。
そして、その服や小物は、着る人が身にまとい生きてゆくことで、時間をかけて完成に向かう、やわらかなアートでもあるなんて。
私もいつか、自分の心と重なるテキスタイルを身にまとい、その作品を、自分の物語を生きてみたい。
可愛いだけではない、すみずみまで上質な洋服は大人になった今だからこそ、自分らしく着こなすこともできそうです。

rovakk musikk TSUGU ミナ ペルホネンの作り方 本の表紙は、ピンク、ブルー、イエロー、ブラウンなどの抽象的なパターンが特徴です。

つぐ minä perhonen 

Artwork:    葛西薫(アートディレクション)
Format:   hard cover
product no.(ISBN) :   978-4-86831-019-8

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文・写真 / 荒澤文香 fumika arasawa

デザイナー

フリーランス ⇄ 会社勤務、ときどき友人たちのお手伝いもしています。
2024年 松本に移住。

Instagram: @fumika

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