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カートが空です

[WALLFLOWER CATALOGUE] FILE 029. Natalie Evans - Movements
WALLFLOWER CATALOGUE

[WALLFLOWER CATALOGUE] FILE 029. Natalie Evans - Movements

目覚めの季節の子守唄

朝、モルゲンロートの時間が早くなり、夕方の5時をまわっても外は明るい。朝晩の冷えこみは相変わらずでも、少しずつ春が近づいていることを感じます。
そろそろ、冬眠していた身体をうぅ〜んと伸ばし、柔らかな光を浴びたい気分。
そんな時にぴったりのジャケット、そして音楽を選ぶなら、私はロンドン在住のSSW・ナタリー・エヴァンス(Natalie Evans)の「Movements」を手に取ります。
ナタリーの爪弾く光の揺らめきのようなハープの音色に、あどけない歌声、とりとめのない独白のような詩、ドラムレスなアレンジが耳に心地よく、儚い音像はまどろみながらみる夢にも似て。そろそろ起きなくてはいけないけれど、目を瞑っていたい心身に甘やかに響きます。
ジャケットには、白い空間で薄いシフォンをひるがえすナタリー本人の姿が。動きの一瞬を捉えた写真は、静と動のどちらも感じさせて鮮やか。少女が布と戯れているような雰囲気で、大人と子ども、夢とうつつ、静と動、冬から春、それぞれの境目に風を起こすような感覚。
コロナ禍に制作されていた作品とのことで、動きたいのに動けないもどかしさや、希望も諦念も入り混じる感情が、表現のなかに見え隠れするようです。
コロナ禍と重ねるのは変な話かもしれませんが、精神的にずいぶん未熟だった私は、若い頃「30歳までにやりたいことをやりきって死ぬ」なんて思っていたのですが、親元を離れてからようやく少女時代を生き直していたとき、成熟を拒絶する気持ちがなぜか枷となり、いつも焦燥感と不自由さを感じていました。子どものままでいたい気持ちと新しい世界への好奇心、その境目をずっと彷徨っていたように思います。
長く留まっていた居心地のよい孤独から歩きだすことは少し勇気がいります。でも、そこを経て見えてくる景色は、想像していたより悪くなかったかもしれません。幾度も冬が来て、春となり。新しい季節は土埃や花の香りもさせながら、その時だけの美しさを携えて訪れます。
目を開けて、動きだしましょうか。冬の終わりに、清らかな淡い熱を心に宿して。
ラズベリー色の盤面が、そんな気分にマッチする1枚です。

Natalie Evans - Movements

Natalie Evans - Movements | (LP:Dark Red)

Artwork:   Josh Bryant (photography), Joanna Davala(design and layout)
Format:   vinyl, LP
product no. :     RC340

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文・写真 / 荒澤文香 fumika arasawa

デザイナー

フリーランス ⇄ 会社勤務、ときどき友人たちのお手伝いもしています。
2024年 松本に移住。

Instagram: @fumika

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