![[WALLFLOWER CATALOGUE] FILE 024. | veps - OSLO PARK](http://rovakk.com/cdn/shop/articles/024_26781bae-1f1f-4de8-8127-4e5e02545fdf.jpg?v=1758608346&width=2000)
[WALLFLOWER CATALOGUE] FILE 024. | veps - OSLO PARK
私はまっすぐに線が描けない
rovakk musikkの店主・クノーさんがパーソナリティを務めるラジオ番組『Hickory Sound Excursion』(FMまつもと)
私はこの番組が好きで横浜にいた頃からよく聴いていたのですが、先日、番組のサブレギュラーであるmini kyuteの斎藤知康さんゲスト回での選曲で、お恥ずかしながらティン・パン・アレイ周辺の音楽を初めて聴きました(どの曲も本当に格好良かった…!)
その中に、松任谷正隆さんのソロアルバムからの1曲がありました。ジャケットは奥様である松任谷由美さんが描かれたものとのこと。
後日、気になって検索をしてみたところ、しゃれた白い洋館を通りから眺めている、外国の絵本のようなアートワークが素敵でした。ただ、絵の中に家の住人や犬猫など、意味性が生じるようなものは描かれていません。そのためなのか、歌やメロディが織りなす作品の世界にスッと入りこむことができる気がします。そして、どこか親しみやすい線が、松任谷さんの歌声にも重なります。
眺めているうちに、同じようなアートワークが特徴的なアルバムのことを思い出しました。
それは、ノルウェーのガールズインディーロックバンドのvepsが、2023年、十代最後の年にリリースした1stアルバム『OSLO PARK』。
ジャケットはほんの少し歪んだパース感がチャーミングな建築物のドローイングです。彼女たちにとって思い入れのある建物なのかどうかはわからないけれど、この、何かの象徴のような建物を見上げる感じが良いのです。
建築物は基本的に水平・垂直がしっかりしていて、それを平面に落とし込んだ場合にもきちんとしたパースが生まれるはずですが、まっすぐであるものが歪んでいたりすることで見過ごせない「引っ掛かり」が生まれます。
不思議な歪みと勢いのある線が、型にはまりたくてもはまれない、はみ出しがちな気分やエネルギーみたいで、女の子バンドの1stフルアルバムだからといって彼女たちの若さ溢れるポートレートでもなければガーリーな世界観のイラストでもなく、突き放したような建築物の絵を持ってくるところが良いなと思っています。
絵を描くことが好きで、得意でもあった小学生〜高校生くらいまでの間、建物を描くことに関しては少々苦手でした。まっすぐな線を引くことができず、どうしても曲がってしまうのが私は嫌だなと思っていたのですが、その「曲がり癖」のようなものを生かしていたら、もっと面白い絵を描けていたのかも。
今からでも、堂々と曲がっていきましょうか。
Artwork: Alva Jöhnk
Format: LP, dark magenta vinyl
product no. : kr315lp-c1
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文・写真 / 荒澤文香 fumika arasawa デザイナー
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WALLFLOWER CATALOGUE(ウォールフラワー・カタログ)
日々の壁際に花咲くデザイン心ゆさぶるアートワークの数々をデザイナーの荒澤文香さんが毎回1 点ずつご紹介。
毎月1回。2度目の二十四節気のタイミング(20日前後)で更新予定です。
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