![[WALLFLOWER CATALOGUE] FILE 016. Ol' Burger Beats “Tidagersvarselet / Hver gang når Instrumental”s](http://rovakk.com/cdn/shop/articles/16_1.jpg?v=1737341884&width=2000)
[WALLFLOWER CATALOGUE] FILE 016. Ol' Burger Beats “Tidagersvarselet / Hver gang når Instrumental”s
感覚をたよりに新世界へ
心惹かれるジャケを手に取ってみたら、自分の聴きたかった音が流れてうれしい。ジャケ買いをしたことのある人ならご経験あるであろう幸せな瞬間だと思います。
このアートワークは、そんなふうに私の心に引っかかったもの。白くて青い寒々とした山の風景、そのどこか遠い場所への空想をクールに遮るのは感光したフィルムの眩いライン。
フィルムの感光は狙ったものか偶然か、あるいは表現上の加工なのか。撮影者のLisana Preteniさんの意図はわからないけれど、この写真をカバーにセレクトした感覚は理解できる気がします。アーティスト本人がデザインも手掛けているということは、写真の発するムードがこの作品にフィットしたのでは、と思うのです。
お洒落でメロウ、静かでジャジーな音世界に微睡んでいると、白昼夢のような残像や、不可思議な違和感が横切る音世界。音だけあるいはジャケットだけ見ても、デヴィッド・リンチの映画のような日常の裂け目に誘われるようです。
こちらの Ol’ Burger Beats は、ジャンルでいうとHIPHOPで「ノルウェーを代表する鬼才ビートメーカー」とのこと。HIPHOPやRAP、CLUBだなんて自分とは無縁の世界だわ!と素通りする可能性もあるのだけれど、ちょっとした違和感やアートワークの引っ掛かりが出会いのきっかけになるのだから、やっぱりその部分の気を抜いてはいけないですね。
カルチャーや歴史を知った上で、あるいは文脈に沿って聴いたなら作品に敬意を払うということになるのだと思う。でもそんな難しいことは考えずに、感覚のまま心に引っかかるものを手繰りよせていったら、自分に馴染む新しい世界に出会えるのかも。
普通にしていたら出会わない者同士が出会えるような、きっかけ作りもデザインもできたらよいな。
ともかく、なんだかフィットする音とアートワーク。ビビッときたら、先入観なしに聴いてみてくださいね。
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文・写真 / 荒澤文香 fumika arasawa
デザイナー
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