![[WALLFLOWER CATALOGUE] FILE 014. 月のこよみ 2025](http://rovakk.com/cdn/shop/articles/14_2.jpg?v=1732276917&width=2000)
[WALLFLOWER CATALOGUE] FILE 014. 月のこよみ 2025
夜空を愛するひとの傍らに
木枯らしが樹々にわずかに残る葉を落とし、街の景色も晩秋から冬へ。夕暮れどき、すっきりとした木のシルエットの向こうに惑星や月を見つけると、なんだか胸がきゅっとなります。空気が澄んでゆくのにつれ存在感が増すのが冬の星座やお月さま。そして「今年は流れ星、いくつ見られるかな?」と、オリオン座流星群などの冬の愉しみを思い出すのです。
そんな、夜空を愛する気持ちの傍らにそっと寄り添ってくれるのが「月のこよみ」。毎年秋になると刊行される小さな暦も2025年版で12冊目となりました。この本を手に取る最初のきっかけは執筆者が友人だから…という理由でしたが、すっかり私にとってなくてはならない本になっています。
月の本を毎年買って楽しいもの?と思われるかもしれませんが、月の満ち欠けはもちろん、月蝕やスーパームーンなどその年のイベントを知ることができますし、基本的な図版や解説以外は書き下ろされていて、楽しみにしている熱心なファンも飽きない工夫がされています。それは執筆者である中野博子さんのこだわりどころ。校正や編集を生業とし、音楽家でもある彼女の端的かつ詩的な言葉選びは、我が友人ながらこっそり尊敬しているのです。
2015年版からずっと装画を手がけているのは花松あゆみさん。見上げれば誰のそばにも居てくれる月のある情景を、郷愁を覚える版画イラストとして描きおろしています。先日、安曇野の「月とビスケット.」さんでの個展も拝見しましたが、物語を感じさせる風景の中の、素朴さとデザイン性のバランスに感嘆してしまいました。
ハンディサイズ、手触りよい和紙ベースの紙、小口折り製本、美しいイラスト、やわらかな言葉。日々の月見に趣を添える、実用一辺倒ではないデザインもまたこの本の大きな魅力です。
本を片手に、自分と同じように月や星を見あげる人が空の下にいること。想像すると何か心強いような、うれしい気持ちになる一冊です。
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文・写真 / 荒澤文香 fumika arasawa
デザイナー
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