![[WALLFLOWER CATALOGUE] FILE 008. ALFA MIST “Variables”](http://rovakk.com/cdn/shop/articles/08_1.jpg?v=1716185774&width=2000)
[WALLFLOWER CATALOGUE] FILE 008. ALFA MIST “Variables”
どうしようもなく、雨の気分
どうしようもなく、雨になりたい夜がある。
あとは家に帰るだけというタイミングでの土砂降り。あたたかな季節なら、大事な荷物を抱えていないかぎり傘をささずに帰る。私も一緒にばしゃばしゃのリズムになる。
まっすぐ帰るのがいやなときは、少し手前で電車を降りてお気にいりの傘をさして歩く。
雨の夜には独特の美しさがあって、それを見つけるのが楽しい。濡れたアスファルトに滲む信号機の青・黄・赤。ライトが映しだす雨の言葉。その行間を、テールランプの余韻が通りすぎる。眼鏡もコンタクトもはずして、ぼやけた夜の水底を魚みたいに洄游する。
どうしようもなく、雨、雨、雨…
そんな気分のとき。
心にも部屋にも雨を降らせたくなったら、手に取るレコードはジャケットからも蒼い湿り気の広がるものを。
Alfa Mist(アルファ・ミスト)は、UKジャズ界を牽引する鍵盤奏者/コンポーザー/プロデューサー。こちらの5枚目のアルバムは、クールな印象なのにあたたかく懐かしい響きもある。ジャンルの境目を溶かすようなアフロビートは都会の喧騒も原初の記憶も曖昧にする。
雨がコンセプトのアルバムではないのに、アートワークの滲みが音楽に水を感じさせてしまうみたい。
ジャズもヒップホップも詳しくない私はどうしても感覚的で子どもっぽい感想になってしまうのだけど、こちらの店主さんなら許してくれる。だって「ジャケ買いのできる」お店なのだもの。そんな風に出会って好きになった音楽もたくさんあるから、デザイン云々を語る前にピピっとくる感覚も忘れずにいたい。
アーティストの個性を表現したり、コンセプトを伝えたり、ジャケットの役割は多々あるけれど、奏でられる音楽とデザインの印象が一致することも、聴き手にとって大切な要素だとあらためて思った1枚です。
_
![]() |
文・写真 / 荒澤文香 fumika arasawa
デザイナー
|