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[WALLFLOWER CATALOGUE]FILE 005. ○(maru) “日々き hibiki”
日々の響きを慈しむように
地球に生まれ、生きているかぎり「一人で生きる」なんてできるのかな。生きているということは、自分以外の存在と響きあうということ。
眠っているときでさえ、潜在意識は窓の外の雨音や風、配達のバイク、カーテン越しの光、鳥の声、さまざまなものの影響を受けている。自分のたてた物音もまた、誰かの世界を構成する響きのひとつだと想像するのは楽しい。無意識にキメのシンバルを鳴らしたり、失敗したりしているのかもしれない。
『日々き』は、Sound Designや映像を手がける高見澤克哉さんと、ピアニスト/シンガーソングライターで音楽療法士でもある高見澤淳子さんによるユニット⚪︎(maru)のLPレコード作品。 hibikiを「響き」ではなく「日々き」とされたのは「日々記」のような意味もあるのだろうか。波音、鴨の声、祭り囃子、お二人の日常や旅先をスケッチした音は、ピアノやギターと重なることで、水彩絵の具のにじみのように聴き手の日々との境界を溶かしてゆく。
目を引くのは、竹内紙器製作所によるボール紙のスリーブケースに、木工作家・関谷駿さんの木版を貼りあわせたジャケット。紙だけ、木だけでは成り立たなかった佇まいはプロダクトとアートのちょうど中間の印象で、素材と感性の響きあいがそのままこの音楽世界を表している。
生きることや日々は、さまざまな響きの重なりでできている。響きを受けとめて。響きをはなって。
ひとの生み出す音やものが、この作品のように穏やかな美しさの響きあいであったらよいなと思う。
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文・写真 / 荒澤文香 fumika arasawa
デザイナー
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