![[WALLFLOWER CATALOGUE]FILE 004. shiika “SOMEWHERE IN HER ROOM”](http://rovakk.com/cdn/shop/articles/04_3.jpg?v=1705741100&width=2000)
[WALLFLOWER CATALOGUE]FILE 004. shiika “SOMEWHERE IN HER ROOM”
レコード針の先にある魔法
“彼女”は猫と暮らしていて、花が好きで、ギターを弾いたりもするみたい。
そんな“彼女”が選んだレコードに針を落とすと、白い壁やテーブルが、音や言葉に彩られてゆくー
長野県松本市のイラストレーター・shiikaさんの繊細に澄んだ感性で紡がれる言葉と、イメージの枝を伸びやかに広げるイラストレーション。
“彼女”はshiikaさんの分身のように感じられるけど、私にも似ている気がする。それは、音楽を愛する人なら誰もが“彼女”とおなじように、音が放たれた瞬間に空間が変容する魔法を知っているはずだから。
音や匂いが、平面である紙から立体的に立ちあらわれる、そんな魔法を体験できる一冊です。
小ロットで印刷物を作るとき、たいてい直面するのは予算と仕様の問題。「こんなふうに作りたい!」という夢は無限に膨らむけれど、実現するには相応の対価がいるもの。時間や予算などさまざまな事情から理想をあきらめた経験は私もあります。
でも、その部分を情熱的なDIYでカバーしたのがこの作品集。手間のかかる糸綴じ製本を手掛けたのは佐久市のインディーレーベル chocolate and lemonade オーナーのbobbyさんで、ひと針ひと針丁寧な仕事と淡い水色の糸が愛おしい。
そして企画やアートディレクションはrovakk musikk の久納さん。魅力的なショップの哲学に通じる、音楽とアートのときめきの伝わる洒落た出版物にものづくりの理想が詰まっています。
二十四節気は大寒。でも、八月からはじまる作品集をあえてひらいてみて。
切ない夏の終わりの記憶と匂いと音楽が、心の白い空間に投影される。小さな本の生み出す魔法をいっそう感じられるから。
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文・写真 / 荒澤文香 fumika arasawa
デザイナー
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