![[WALLFLOWER CATALOGUE]FILE 002. Iwamura Ryuta “Raining to Hear”, “Tuning to Hear”](http://rovakk.com/cdn/shop/articles/02.jpg?v=1700638121&width=4176)
[WALLFLOWER CATALOGUE]FILE 002. Iwamura Ryuta “Raining to Hear”, “Tuning to Hear”
ジュエルケースという名のアートな額縁
CDが登場した頃の記憶はあまりない。父は80年代の終わりまで新作もレコードで買っていたと思う。ただ中学生の頃、自転車に乗って町はずれのレンタル屋さんに借りにいったCDが透明なプラスチックのケースに入っていたことは覚えている。
CDを収めるものとしてスタンダードなかたちであるジュエルケースだけれど、レコード時代の名盤のリイシューがぴかぴかのプラスチックに収まると、なんだか居心地悪そうに見えることもある。
でも、岩村竜太さんのこちらのシリーズは、そんなごく普通のケースが特別に仕立てられたぴったりの装いに見えてくるから不思議。
白い紙にシンプルな線画とタイポグラフィのNoritakeさんによるデザインは、無駄のない動きと目線だけで内面を伝えられる俳優のよう。その線にはやわらかな揺らぎも滲んでいるので、無機質な冷たい感じはしない。
岩村さんの奏でるメロディのように控えめに心を揺らす、でも確固たる美学が透明なケースに収まっている。それは、コンセプチュアルアートのようにも思う。
デザインをするとき、特殊な素材や加工にこだわったり、新しいことを常に取り入れる必要はなくて、表現と思想、デザインがぴたりと重なりあったなら余分な細工はいらない。シンプルな選択が最高の仕事。
そんなミニマルデザインの憧れのかたちです。
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文・写真 / 荒澤文香 fumika arasawa
デザイナー
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