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[Somewhere in Her Room]2023年9月
illustration, text: shiika
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9月
“枯れる花 / 溶ける月”
夏から秋の狭間のなんとなく落ち着かない気持ちの夜に、
厚い辞書にはさんでおいた花をひとつずつ丁寧にノートに貼っていく。
横に小さく名前を記すと、植物図鑑のようになる。
鮮やかな色が抜けて枯れてしまっても、そこにあるうつくしさは変わらない。
優しくて、哀しくもある。
そしてほんのり甘く芳しい干し草のような香りがする。
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月あかりの不思議な浮遊感。
ボートの上でゆらゆらとくつろいでいるような優しさがある。
溶けそうな、まるみのぬくもり。
同時に月はミステリアスな面を想起させる表情も持っている。
石の表面のように静かで冷たい輝きは、
時に深い森の地面まで切り込むように照らす。
まるで知り得るすべてを受け入れるかのように。
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