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2026年11月8日 WALLFLOWER CATALOGUE FILE.38: きくちちき - ちょうちょちょうちょ
WALLFLOWER CATALOGUE

2026年11月8日 WALLFLOWER CATALOGUE FILE.38: きくちちき - ちょうちょちょうちょ

ちょうちょ ちょうちょ どこ いくの?

小学校の4年生のとき、国語の教科書に『飛べ!あげはちょう』(作・高井 節子)というお話が載っていたのをよく覚えています。なぜかというと、私はその頃、アゲハの幼虫に夢中だったからです。
通学路に山椒を植えているお家があり、道に飛び出している強烈な香りの葉っぱがいつも気になっていました。ある日、葉っぱに小さな丸い卵が産み付けられているのをみつけて「アゲハだ!」と思った私は、それを手折って家に持ち帰りました(当時、無断でいただいてしまったことは懺悔します)
透明なイチゴパックに葉っぱごと収めて観察していると、卵から小さな黒い毛糸のような生き物が生まれました。図鑑を見るのも嫌いなくらい虫が苦手だったはずなのに、自分で育てているとどんな生き物も可愛くなってくるのは不思議なものです。黒い毛糸はイモムシとなり、脱皮を繰り返しながら大きくなり、知らぬ間にイチゴパックから脱走して私に踏まれそうになるという危機も乗り越え、無事に蛹になることができました。
蛹になって10日ほど経過し「もしかしたら今日、羽化するかも?」という予感のあった日。私は蛹のついた枝をガラス瓶に入れて学校に持ってゆきました。
授業中、足元に置いたガラス瓶に目をやると、ちょうど蝶がモゾモゾと蛹から体を出しているところ。瓶の中で縮んだ躰を乾かし、しばらくすると羽を広げて動き出したので、私は蓋をあけました。すると蝶はひらひらと教室を舞い、窓のほうへと飛んでゆきました。
クラスのみんなで羽化した蝶を見送る、ドラマみたいな瞬間があったことを忘れられずにいます。出来すぎた話ではありますが、ちょうど国語の授業中『飛べ!あげはちょう』を読んでいる時のことでした。
あの蝶々は、どこに飛んでいったのでしょうか。
どこからともなく現れて、ひらひら目の前を通り過ぎ、花の蜜を吸っていたかと思うと、また飛んでいく。掴みどころなく神秘的で美しい姿で古くから人々を魅了してきた蝶々は、興味を持って観察してみないかぎり生態は謎に包まれている気がします。
そのドラマティックな姿を、子どもがはじめて目にしたような感性で詩情豊かに表現した作品があります。
きくちちきさんの絵本
『ちょうちょちょうちょ』
童謡を思わせるやさしい言葉づかいと、のびのびとしたダイナミックな絵。
特色6色を使った「描き分け版」で描いたという絵は、1ページ、2ページと印刷色が増えてゆくところが、蝶の生命を通して見た世界の輝きのようです。
クライマックスのカラフルさは、まるで生命の爆発。
ただ絵をスキャンして印刷するのとは違う複雑な工程で作ることは、描くほうにも印刷するほうにも工夫や計算が必要なはずなのに、そのようなプロセスを経ても失われることのない躍動感と、特色で強調された色彩の美に心を掴まれます。
装丁はやっぱり!な、サイトヲヒデユキさん。カラフルな作品でありながら、デザインと紙選びによって落ち着いた大人の風合いに。カバーをはずした本体表紙のクラシカルなデザインも魅力的で、これは絵本の顔をしたアートブックとも言えるでしょう。
読み終わると幸せな気持ちで生命とその神秘を讃えたくなる、素敵な一冊です。
ちなみに、今の時期に蛹になった蝶はそのままの姿で冬を越し、春になって羽化するのだそう。
寒い寒い冬を越えて、次の季節にまた会えることが楽しみです。

 

Chiki Kikuchi - Chocho Chocho (Butterfly Butterfly)

Artwork:  きくちちき(絵)サイトヲヒデユキ(装丁)
Format:   book, hard cover
product no.(or ISBN) :   9784032327403

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文・写真 / 荒澤文香 fumika arasawa

デザイナー

フリーランス ⇄ 会社勤務、ときどき友人たちのお手伝いもしています。
2024年 松本に移住。

Instagram: @fumika

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WALLFLOWER CATALOGUE(ウォールフラワー・カタログ)

デザイン心ゆさぶるアートワークの数々をデザイナーの荒澤文香さんが毎回1 点ずつご紹介。
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